私の名前はジロギン。
これは私が大学4年生だった頃の話です。
9月にサークルの同級生たちと、少し早めの卒業旅行をすることになりました。
実際のところ、旅行なんて程遠い、遊園地に日帰りで行くだけの遠足だったんですけどね。
男5人、女3人の8人で行くことになりました。
その遊園地は都市部からやや離れたところにあり、絶叫系アトラクションが有名です。
当日は雲ひとつない晴れ。絶好の絶叫アトラクション日和。
行きのバスでは全員が
「〇〇(ジェットコースター名)乗ろうね!最初に乗ろうね!」
と、バカな大学生のようにはしゃいでいたのを覚えています。
朝一のバスで出発したものの、園内に着いてみると、お目当てのジェットコースターの前には長蛇の列。
並ぶのも退屈ですし、正直あまりジェットコースターが得意ではない私は、
「やめとかない?この列だよ?乗るまでに4日くらいかかるでしょ?」
と提案したものの、バカな大学生たちは、走り出したイノシシのように止まりません。
2時間ほど並んで、ようやく私たちの順番が回ってきました。
ジェットコースターは、2人が横並びに乗るよくあるタイプのもの。
私の右隣には、メガネをかけた男の同級生が座りました。
その彼はあまりサークルに顔を出さず、忘れた頃にやってくる確定申告のような感じのメンバー。私も顔を合わせたことはそう多くはなく、少し話しにくさがありました。
が、私としてはそれ以上に、ジェットコースターの怖さの方が気がかりでした。
発車して、どんどんレールを登って行くジェットコースター。
高さはウルトラの父の身長を超えていたと思います。
ジェットコースターが、頂点に達したその時でした。
私の右に座っていた彼が、両手で私の首をグッと締めてきたのです。
もちろんジェットコースターは止まるはずもなく、そのまま急降下。
コースターの走行音と風が吹く音で聞き取りにくかったですが、彼は、
「ねぇ?どっちが怖い?ボクとジェットコースターどっちが怖い?ねぇ!?ねぇ!?」
と私に言っていたようです。
このままでは命に関わる。なんとか抵抗しようとした私は、
「ジェットコースターに決まってんだろうがぁ!!」
と叫びながら、彼の股間をグイィっと、わし摑んだんです。ぶどう狩りをしたときのことを思い出しながら。
彼がひるんだ一瞬のスキをつき、私は腕を振り払うことに成功。
そうこうしてるうちに、ジェットコースターはゴールに到着しました。
私はほぼ無意識に
「ジェットコースターに決まってんだろうが…怖いから…何百万人も乗りに来てるんだろうが…」
と、彼につぶやいていました。
その後も遊園地を楽しみましたが、彼が私以外のメンバーに同じようなことをしてる様子はなく、私にも何もしてきませんでした。
あなたの身近でも、こんなことが起こるかもしれません
それでは、おやすみなさい。