私の名前はジロギン。
年に1度の誕生日は、何歳になっても楽しいものですね。
「おめでとう」と言ってもらえたり、誕生日プレセントをもらえたり。
誕生日パーティでは何を食べることが多いでしょうか。
お寿司?ケーキ?ステーキ?
私が小さい頃、家では「ピザ」を食べることが多かったです。
デリバリーのピザを、父と母が注文していたのを思い出します。
特別な日だけ食べられるピザ。家族の幸せな輪のように丸いピザ。
しかし、誰が作ったかもわからないピザが、必ずしも幸せを運んでくれるのでしょうか?
今回は、1枚のデリバリーピザを頼んだ、ある家族のお話。
東京都内某所にあるマンション。その5階に住むある一家。
Aさん(42歳)は、妻(40歳)と息子(7歳)の3人家族を支える大黒柱。
会社の飲み会があるはずの金曜日の夜でしたが、この日は会社終わりですぐ家に帰ってきました。
なぜなら、息子の7歳の誕生日だったからです。
Aさん
「ハッピバースデートゥーユー♪」
妻
「ハッピバースデートゥーユー♪」
Aさん・妻
「ハッピバースデーディア 〇〇(息子の名前)〜♪ ハッピバースデートゥーユー♪」
息子はケーキに刺さったろうそくの火を吹き消しました。
Aさん
「おめでとう〜!よし、じゃあお母さんが作ってくれたご飯食べるか!」
息子
「うん!お腹すいた!」
Aさん
「・・・でも、ピザがまだ届いてないな。7時には到着するって言ってたのに、もう30分も過ぎてるぞ」
妻
「そうね・・・先にケーキとか食べ始めちゃいましょうか。そのうち届くでしょ」
Aさん
「そうだな。ったくよぉ、せっかくの誕生日だってのに、配達のやつは何やってんだ?」
それからさらに1時間半が経った夜9時。
「ピンポーン」とインターホンがなりました。
Aさんが玄関に向かう間も、インターホンの音は鳴り続く。
響き渡るインターホンの音は、Aさんのいら立ちをどんどん増やしていきました。
Aさんの怒りは、玄関の扉を開けた瞬間、ピザの配達員を怒鳴りたい気持ちにまで膨れ上がっていたのです。
配達の男
「す、すみません!遅れまして!『ピッツァーナ』です!ピザのお届けに参り」
Aさん
「おせぇんだよテメー!7時に来るっつったよな?今何時だ?時計読めるか?」
配達員は、身長160cmちょっとの小柄でやせ型の男。眉毛はへの字になり、おどおどしている。見るからに気が弱そう。
右の頬に5cmくらいの切り傷があったのが少し気になりましたが、Aさんとしては、怒りをぶつけやすいタイプの男でした。
配達の男
「すみません・・・お届けの時間に間に合うよう店を出たのですが、道が混んでおりまして、あの・・・」
Aさん
「テメーの店は4丁目だよな?うちは2丁目だ。歩いてでも20分で着けるわ。テメーあれか?4丁目から2丁目まで埼玉県でも経由してきたのかよ?ああ?」
配達の男
「すみません・・・配達予定時間は電話対応の者が感覚で言った時間でして、実際は遅れることもあるもので・・・」
Aさん
「お前いくつ?30そこそこか?大学生のバイトじゃあるまいし、社会人なら報連相くらいちゃんとしとけや!」
配達の男
「すみません・・・あの、ピザのお代は結構です・・・冷めてしまってるかもしれませんが、レンジなどで温めれば美味しくいただけます」
Aさん
「お前に代金取らないって決める権利あんの?後で店から取り立ての連絡来ても絶対払わねぇからな!さっさと帰れこのボケ!」
配達の男
「すみませ」
配達の男が謝り切る前に、Aさんは扉をバタンッと強めに閉めました。
男の言った通り、ピザは温めれば問題なく、美味しく食べられました。
ただ、Aさんが配達の男に怒鳴り散らしたのは家族にも聞こえていたでしょうし、不快な思いをさせたかもしれません。
息子の誕生日パーティは大成功でしたが、Aさんとしては、少し気がかりな夜になってしまいました。
翌朝7時
Aさんは家族の中で一番に目を覚ましました。
息子は0時近くまで遊んでいたから、しばらくは起きてこないでしょう。
妻は息子が寝た後に、食器の片付けをしてから寝ていました。せっかくの休日、ゆっくり寝かせてあげたいところ。
Aさんはリビングのテレビをつけました。朝のニュース番組が放送されていました。
アナウンサーの女
「続いてのニュースです。昨夜未明、東京都内で3人を誘拐・殺害した容疑者が逮捕されました。容疑者の名前は〇〇 〇〇 31歳男性。職業はフリーター・・・」
Aさん
「こいつ・・・昨日の・・・」
テレビで容疑者と報道されている男の顔写真は、昨夜Aさんが怒鳴りつけたピザの配達員と同じだったのです。
右ほほに傷が、昨夜の配達員と全く同じ位置にありました。
Aさんは背筋に寒気を感じました。
自分が昨日怒りをぶつけた相手は連続殺人犯・・・
もしかしたらAさんも、逆上した男に殺されていたかもしれない・・・
さらには家族にまで被害が及んでいたかもしれない・・・
Aさん
「おいおいマジか・・・でも、不幸中の幸いだな。殺されずに済んだし、こいつも逮捕されたし」
アナウンサーの女
「〇〇容疑者は殺害した3人について、いずれも出会い系サイトで知り合った女性と供述。
3人の遺体については『自宅に置いておき、少しずつ解体。アルバイト先で作るピザの中に混入し、隠滅しようとしていた』と話しているとのこと。
ピザは3日ほど前から〇〇容疑者の手によって、一般家庭などに配達されており・・・」
Aさんが安心するのは早かったのです。
ピザの配達時間が2時間も遅れたのは、配達の男が自宅で死体を切り刻んでピザに入れていたから・・・?
だとしたら昨夜、Aさんや妻、息子が食べたピザの中には・・・
それでは、おやすみなさい。